アクトペディア7

  1. 口づけ
    『神人』が『神堕人』の最も『ミツ』の強い唇に興奮し、欲求が抑えられなくなった時に行おうとする行為。
    口づけされた『神堕人』は『神人』となる。
    そのため、みだりに口づけをして仲間を増やさないように『神人』は自ら厳しい掟を定めている。
  2. ミツ
    『神人』のみが感じ取れる匂いで、一部の『神堕人』が発散している“強い匂い”“強い匂いを持つ者”の総称。
    その甘い芳香が蜜を想起させることから、その表現が使用される。
    体質的に極度に強いミツを発散している『神堕人』そのものを“ミツ”と呼称することも多い。
    過去には“ミツ”による『神人』社会の混乱を防ぐため、“ミツ”自体を殺害してしまう事例があったとされる。

    “ミツ”には、一人一人独特の匂いが存在する。
    『神人』は相手の“ミツ”だけで、年齢、健康状態、性格、体格なども推測できるという。
    “ミツ”は『神堕人』にしか宿っていない。
    その者が『神人』となれば、それまであった“ミツ”は失われる。
  3. 上京
    実際には『神人』が暴走して『神堕人』を襲ってしまい処刑されたことを意味する言葉。
    『嫦娥町』に住む『神人』だけが使用する表現で、“上京した”“引っ越した”と表現される。
    『神人』の存在を外部に秘匿するため、自然に使われだした言い回しだと思われる。

    表向きは突然いなくなった人が、なぜいなくなったのかを誤魔化すため。
    『神人』側の心情としては、処刑という残酷さをオブラートに包んで表現したい思いから用いていることが多い。
  4. オオカミの彫像
    『旧市街』の家々の玄関前に置かれていたりする木彫りの像。
    彫像は、オオカミと人間を融合させたような奇妙な姿をしている。
    仏師・円空が彫ったような、丸みのあるフォルムでどこかユーモラスな印象を与える。
    恐ろしい印象を与えるものではない。
    この土地伝統の魔よけのようなものだとされる。

    実際には、『不埒者』が出て処刑された証として家の前に置かれる。
    かなり昔に作られたと思われるものも残されており、古くから行われてきたしきたりだと思われる。
    現在では、学校の美術の授業で生徒に作らせているものを使用するため、像の出来の善し悪しはバラバラ。
    学生に作らせているのは『町内会』と『自治会』の意向で、若き『神人』たちに掟の厳しさを自覚させることが目的。
    ある意味“暴走したらこうなる運命だぞ”という暗黙の脅迫である。
  5. 凶月
    凶月は運勢が劣の月のこと。
    一般的に豊月(運勢が優の月)の3ヵ月前の月を指す。
    偶然なのか凶月の時期は紅い月であることが多いため、不吉の象徴として忌み嫌われるようになった。
    転じて、赤い月そのものを“凶月”と称し、昔から畏怖してきた。
    現在の人々にもその因習は根強く残っており、天候不順や災害をもたらすサインだととらえる住民も多い。
    それ故、妖しい真紅の月に魅了された者は、不吉な人間であると毛嫌いされる。

    『神人』は、凶月の夜になると『衝動』が強くなる傾向がある。
    しかし、月が及ぼす影響を科学的に説明することはできず狼と自分を何となくシンクロさせてしまう擬似憑依、一種の獣化妄想ではないかとする説が有力。
    大多数の『神人』は、シンクロしそうになる自分を戒めるため、『衝動』が暴走しないよう身を引き締める行為が習慣化している。
  6. 凶月の刻
    今夏は何百年に一度訪れるという凶月の夏とされ、特に凶月の刻と呼ぶ。
    紅き月『凶月』、『八朔』の不作、不安定な天候、高い湿度、上昇の一途をたどる気温……『衝動』を抑えることが困難となる条件が全て揃った、極めて危険な時期とされている。
    『神人』たちは『ミツ』の匂いを強く感じてしまう過敏な状態になる。
  7. カプセル
    特殊な方法で『八朔』搾汁液から柑橘オイルを取りだし、そこから『オーラプテン』を高濃度で採取。
    そのエキスを充填したカプセル製剤のこと。
    果実1個当たりから採取できる『オーラプテン』の量はわずかであるため、大量の果実が必要となる。
    『嫦娥町』が『八朔』の産地であるからこそ製造可能なものだといえる。
    老化防止の効果もあるとされる。

    『神人』の『衝動』を抑える効果があるとされ、『嫦娥医療センター』で処方されている。
    いわば『衝動』抑制剤。
    7年ほど前、院長である『櫛名田重次』を中心とした『神人』たちの研究チームが開発した。
    ほとんどの『神人』たちが日頃から服用している。

    臨床実験では、『八朔』そのものを摂取するより、嗅球を麻痺させて扁桃体への電気信号を一時的に遮断させる効果が高いとされる。
    個人差はあるものの10倍~40倍ほど高い。

    『嫦娥町』の『八朔』から製造したものでないと、『衝動』抑制効果が薄いとされる。
    この土地の土壌に秘密があるとされるが、明確な研究結果は発表されていない。
  8. 精油治療
    『衝動』の昂りが酷い状態の『神人』に対しては、精油の注射や点滴を打つこともある。
    精油は100%天然物質であり、人工的に合成した物質を一切含んでいない。
    しかし本来人間の体内に注入すべき成分ではないため、激しい吐き気やめまいなどの副作用が生じる。
    『カプセル』よりも高濃度の『オーラプテン』を含んでいるため、即効性と効果が高い。
  9. オーラプテン
    『八朔』やグレープフルーツ、夏みかん、ユズなどの柑橘果皮に多く含まれる植物性抗酸化物質のこと。
    果肉にはほとんど含まれていない香り成分で、クマリン系化合物の一つ。
    これらの成分には強い発ガン抑制効果、癒し効果などがあり、免疫力を高める作用があるとされている。
  10. マナの交通事故
    『九澄博士』は小学5年生の時、電車で2時間ほどかかる祖父母の家へ一人で行く計画を立てた。
    どうしても一人だけで行きたかったが、妹『九澄マナ』もついて行くと駄々をこねた。
    結局二人で行くことになり、駅に向かったものの博士はマナが邪魔だったため途中で追い返してしまった。
    マナはその帰りに交通事故に遭遇し、車椅子生活を余儀なくされる。
    無理やり追い払って置き去りにしたことが原因であり、博士は自責の念にかられる。
    しかしマナは腹痛だったから行くのを中止したと両親に主張し、博士のことを庇った。

    妹にできた大きな借り。博士は、マナに対して一生償いをしなければ、と強い決意を心に刻む。
    追い払った身勝手な行為……
    事故に遭ったのは僕のせいなんだ……
    これからは自分がずっと妹を守っていかなければならない。
    それが己の役目であり、嘘をついて庇ってくれた妹に対する恩返しだと常に思い続けている。
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